恐ろし!怪し!もののけ古典講座

妖怪や幽霊、神仏等、怪しいモノが登場する古典作品を紹介します。
高校生のテスト対策や大学受験対策でも役立つように、
古典文法や古文常識を解説します。が、メインはオカルト関連の薀蓄です。
「古典は面白い!」と言う若者が増えると、もののけ達も喜びます。
恐ろし!怪し!もののけ古典講座 TOP  >  「の」の識別

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尼、地蔵見奉ること(『宇治拾遺物語』より)(3)~「の」の識別・敬語の復習~

 今は昔、丹後国に老尼ありけり。/地蔵菩薩は暁ごとにありき給ふといふことを/(老尼は)ほのかに聞きて、暁ごとに地蔵見奉らんとて、ひと世界惑ひありくに、/博打の打ちほうけてゐたるが見て、「尼君は寒きに何わざし給ふぞ」と言へば、/「地蔵菩薩の暁にありき給ふなるに、/(私(=老尼)は)会ひ参らせんとて、かく歩くなり」と(老尼が)言へば、/「地蔵のありかせ給ふ道は/我(=博打)こそ知りたれ。/(あなた(=老尼)は)いざ給へ。/(私(=博打)が)会はせ参らせん」と(博打が)言へば、/「あはれ、うれしき事かな。地蔵のありかせ給はん所へ、/(あなた(=博打)は)我をゐておはせよ」と(老尼が)言へば/「(あなた(=老尼)は)我に物をえさせ給へ。/(私(=博打)が)やがてゐて奉らん」と(博打が)言ひければ、/「(私(=老尼)は)この着たる衣(を)、奉らん」と(老尼が)言へば、/(博打が)「さは、いざ給へ」とて隣なる所へゐて行く。


<前回までのあらすじ>
「お地蔵様が夜明け前に歩き回る」という都市伝説を信じる年老いた尼さんは、そのお地蔵様に会いたい一心でさまよい歩くのだった。彼女の運命や如何に?彼女はお地蔵様に無事会えるのか?



みみずく:<あらすじ>まで書いてあるけど、前回はたった数行しか訳さなかったんだよね(笑)今回から、もう少しサクサク読んでいこうね!

リョウキキョウキ:ハーイ!

「の」の違いは分かるかな?



博打の打ちほうけてゐたるが見て、「尼君は寒きに何わざし給ふぞ」と言へば、/「地蔵菩薩の暁にありき給ふなるに、/(私(=老尼)は)会ひ参らせんとて、かく歩くなり」と(老尼が)言へば、
【訳】博打打ちで博打を打つのに夢中になっている者が見て、「尼君はこの寒いのに何をしていらっしゃるのか」と言うので、「地蔵菩薩が夜明け前に歩きなさるそうなので、(私は)お会い申し上げようと思って、このように歩き回っているのだ」と(老尼が)言うので、



みみずく:この部分で2人に理解してもらいたのは、「の」の識別だね。「博打の打ちほうけてゐたるが見て」の「の」と「地蔵菩薩の暁にありき給ふなるに」の「の」はどちらも助詞なんだけど、意味を区別してほしいんだ。

ところでリョウキに聞くけど、「俺の女」の「の」と「俺の愛する女」の「の」って、ちょっと意味が違くない?

リョウキ:確かに違いますね。「俺の女」は「この女は俺のものだ!」って感じだけど、「俺の愛する女」は「俺が愛している女だけど、まだ俺のものになってない」って感じですね。

キョウキ:兄ちゃんの場合、「俺の女」も「俺の愛する女」も二次元の世界にいるんだよね?キモ~イ!!

リョウキ:黙れ!おまえみたいな顔も性格も最悪な女を見ていると……グフッ……(リョウキがキョウキに何をされたかはご想像にお任せします(笑))

みみずく:兄妹喧嘩はいいんだけど、部屋の中を血で汚さないでね(笑)

それはさておき、「俺の女」と「俺の好きな女」とでは、「の」の意味が違ってくるんだ。「俺の女」は、「俺の」が「女」という名詞を修飾しているよね?このように、名詞(体言)を修飾するときに使う「の」を連体修飾格って言うんだ。

一方、「俺の愛する女」は、「俺愛する女」と言い換えられるでしょ?このように、「が」に言い換えられる「の」を主格と言う。「主格」の「主」は「主語」のことだよ。「俺の愛する」を「俺が愛する」って言い換えると、「俺が」が主語になるでしょ?

で、上の古文では、「地蔵菩薩の暁にありき給ふなるに」の「の」が連体修飾格か主格のどちらかなんだけど、どっちだい?

リョウキ:「地蔵菩薩の」が「暁」を修飾していると考えると、「地蔵菩薩の夜明け前」となって、意味が分からない。「地蔵菩薩が歩きなさる(ありき給ふ)」と考えると意味が通じる。ということは、「地蔵菩薩の暁にありき給ふなるに」の「の」は主格ですか?

みみずく:正解!

で、同じように「博打の打ちほうけてゐたるが見て」を「博打打ちほうけてゐたるが見て」とやっちゃうと意味が分からなくなる。ところで、君たちは「博打(ばくち)」って知ってるよね?

キョウキ:知ってますよ!手に握ったまま火をつけると指が吹っ飛んで面白いアレですよね?

みみずく:それは「ばくち」じゃなくて「ばくちく(爆竹)」!というか、そんな危険行為を、良い子のみんなはマネしないでね!!

「博打」というのは賭け事・ギャンブルのこと。お金をかけて失敗するリスクもあるから、危険なことの代名詞としても使われる。たとえば、「数学はバクチだ」とか、言わない?

リョウキ:あれって「数学はバクチクだ」だと思ってました。俺は数学でよく赤点を取って、いろんなものが吹っ飛んでしまうので、「爆竹」の方が合ってるような……

みみずく:はいはい、お大事に。「博打」の意味も分かったところで続きに戻るよ。

「打ちほうけてゐたる」の「ほうけ」は「ほうく(惚く)」が言い切りの形(終止形)で、「一つのことに夢中になる」の意味。今でも「遊びほうける」って言うだろ?その「ほうける」と同じ意味だね。

「ゐたる」の「ゐ」は「ゐる」の連用形、「たる」は存続の助動詞「たり」の連体形だ。そして、この連体形の部分は「~する人」や「~すること」と訳すんだ。連体形の活用語の後ろに来るべき名詞(「人」「こと」など)が省略されている表現を準体法と言うんだよ。

だから、「打ちほうけてゐたるが見て」は「博打を打つのに夢中になっている者が見て」と訳せる。つまり、「博打」を「博打打ち」と訳すと、「博打打ち=博打を打つのに夢中になっている者」という関係が成り立つ。このようにイコール(=)の関係になる「の」を同格と言って、「で」と訳すんだ。

「博打の打ちほうけてゐたるが見て」は、「博打打ち博打を打つのに夢中になっている者が見て」と訳そうね。

今回扱った「の」の識別をもう一度まとめるよ。

①「俺女」→「俺の」が「女」(名詞=体言)を修飾→連体修飾格の「の」
②「俺愛する女」→「俺愛する女」のように、「の」を「が」に言い換えられる→主格の「の」
③「博打打ちほうけてゐたるが見て」→「博打打ち博打を打つのに夢中になっている者が見て」のように、「の」を「で」と訳す→同格の「の」


他にも「の」の用法があるんだけど、今回はこのくらいにしておこう。

敬語を復習しよう!!



みみずく前回話した敬語の復習をしよう。「地蔵菩薩の暁にありき給ふなるに、会ひ参らせんとて、かく歩くなり」の「ありき給ふなる」「会ひ参らせん」「歩くなり」の主語をそれぞれ答えて。

リョウキ:さっき主格の「の」を確認したし、「給ふ」という尊敬の補助動詞が使われているから、「ありき給ふなる」の主語は偉い人、つまり地蔵菩薩です。

キョウキ:「会ひ参らせん」には「参らす」という謙譲の補助動詞があるから、主語が偉くない人の老尼に変わってますね。「歩くなり」にも敬語が使われていないので、これに対する主語も老尼です。

みみずく:敬語がだいぶ分かってきたね。素晴らしい!

長くなってきたから、ここでいったん解説を区切ろうね。「また数行しか訳してないじゃないか!」というツッコミは無しで(笑)次回に続く!(続く)

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[ 2015年03月24日 10:00 ] カテゴリ:宇治拾遺物語 | TB(0) | CM(0)
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みみずく先生@妖怪博士見習い

著者:みみずく先生@妖怪博士見習い

都内(墨田区両国周辺)で家庭教師業を営んでいるみみずくと申します。本ブログでは、妖怪や幽霊、神仏等、怪しいモノが登場する古典作品を紹介します。高校生や大学受験生の役に立つように古典文法や古文常識に触れつつ、もののけ達の跋扈する、ちょっぴり怖くて魅力的な世界を散策します。一人でも多くの方に古典を楽しんでもらいたいと思っています。家庭教師・ライターのお仕事依頼等は、下のメールフォームからお願いします。

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