恐ろし!怪し!もののけ古典講座

妖怪や幽霊、神仏等、怪しいモノが登場する古典作品を紹介します。
高校生のテスト対策や大学受験対策でも役立つように、
古典文法や古文常識を解説します。が、メインはオカルト関連の薀蓄です。
「古典は面白い!」と言う若者が増えると、もののけ達も喜びます。
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尼、地蔵見奉ること(『宇治拾遺物語』より)(6)~「む(ん)」の識別・「ぬ」の識別・敬語の復習~

<前回までのあらすじ>
「お地蔵様が夜明け前に歩き回る」という都市伝説を信じる年老いた尼さんは、ギャンブラーに連れられて、「地蔵」というキラキラネームの子どものもとへ連れて来られた。尼さんが着物を渡すと、ギャンブラーはさっさと逃げてしまった。これは詐欺だったのだ!しかし、純粋な尼さんは、自分が詐欺に遭ったことにすら気づかず……



みみずく:いよいよ「尼、地蔵見奉ること」の最終回です。2人とも気合いを入れていきましょうね!

リョウキキョウキ:ハーイ!

「ん」の識別再び!!



 尼は、『地蔵見参らせん』とてゐたれば、/親どもは心得ず、『(尼は)などこの童を見んと思ふらん』と思ふほどに、/十ばかりなる童の来たるを、/(親が)「くは、地蔵よ」と言へば、/、見るままに是非も知らず、臥しまろびて、拝み入りて土にうつぶしたり。

【訳】尼が地蔵を拝み申し上げようと思って座っているので、親たちは納得がいかず、 『(尼は)なぜうちの子を見ようと思うのだろうか』と思ううちに、十歳ほどの子どもがやって来たのを、親が 「おい、地蔵だよ」 と言うので、尼は、それを見るや否や夢中になって、転げるようにひれ伏して、拝みこんで地面にうつ伏した。



キョウキ:地蔵君の親御さんもビックリですね!急にやってきたババアが、自分の子どもを見たとたんにひれ伏して拝み始めるんですから。今の時代だったら即通報ですよ(笑)

みみずく:キョウキも、将来こういう人にならないように、今のうちからしっかり勉強しておこう。無知は奇怪な行動につながるからね。

で、上の文章には「ん」が3ヶ所ある。「地蔵見参らせん」「この童を見ん」「思ふらん」のそれぞれの「ん」を文法的に説明しよう。

リョウキ:「地蔵見参らせん」を品詞分解すると……

地蔵/見/参らせ/ん (名詞/上一段動詞「見る」の連用形/謙譲の補助動詞「参らす」の未然形/意志の助動詞「ん」の終止形


ここは、尼さんが心の中で思っていることだ。「参らす」という謙譲語が使われているから、主語は偉くない人の尼さん。「地蔵」の後ろには「を」を補い、主語が一人称なので「ん」は意志で訳す。

だから、「ん」は、意志の助動詞「ん」の終止形

キョウキ:「この童を見ん」の部分も主語は尼さんで、尼さんの立場で考えれば、主語は一人称となるわ。だから、ここの「ん」も、意志の助動詞「ん」の終止形

「思ふらん」の方は、「らん」が現在の原因推量の助動詞「らん」の終止形なので、助動詞の一部と答えればいいかしら?

みみずく:2人とも大丈夫なようだね。

「ぬ」の識別を考えよう!



みみずく:さあ、ここからサイケデリックな展開になるから、心して読むように!(笑)

 、すはゑを持て遊びけるままに来たりけるが、そのすはゑして手すさみのやうに額をかけば、額より顔の上まで裂けぬ。/裂けたる中よりえも言はずめでたき地蔵の御顔、見え給ふ。

【訳】子どもは、木の小枝を持って遊んだまま来たが、その小枝で手遊びのように額をひっかくと、額から顔の上まで裂けてしまった。裂けた中から、言いようもなく素晴らしい地蔵のお顔が、見えなさる。


リョウキ:子どもの顔の裂け目から姿を現す地蔵菩薩……衝撃的ですね!

キョウキ:最近、そういう映画ありましたよね?あっ、『寄生獣』!!

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リョウキ:地蔵菩薩は実はパラサイトだった!(笑)

みみずく:2人ともバカなことを言ってないで、本題に戻るぞ。

君たちは「裂けぬ」を「裂けてしまった」と訳したけど、どうして?

リョウキ:そう訳さないと、地蔵菩薩を登場させられないし……

みみずく:以前も言ったけど、古文を文脈に頼って訳すのは危険で愚かな行為だ。文脈判断の前に考えるべきは、あくまでも文法規則!「裂けぬ」を訳すなら、「ぬ」の識別を考えなければならない。

「ぬ」には、完了「ぬ」の終止形と打消「ず」の連体形があるけど、これらはどう見分けるの?

キョウキ完了「ぬ」は連用形接続で、打消「ず」は未然形接続です。なので、「ぬ」の直前の動詞を見れば、「ぬ」がどっちか分かります。たとえば、「言ひぬ」は「言ひ」が連用形なので完了「ぬ」、「言はぬ」は「言は」が未然形なので打消「ず」の連体形です。

みみずく:キョウキの言ってることは正しい。でも、「裂けぬ」の場合、「裂く」は自動詞の場合下二段活用になって、未然形も連用形も「裂け」なんだけど、どうする?

キョウキ:あうっ……

リョウキ:じゃあ、「ぬ」の下を見ます。「~ぬ。」という文末の場合は完了「ぬ」の終止形、「~ぬ+名詞」の場合は打消「ず」の連体形です。

みみずく:基本的にはリョウキの考え方でOK。ただ、例外的に、打消「ず」の連体形が文末に来ることがあるよね?

キョウキ係り結びがあるときですか?

みみずく:その通り!

「~ぬ。」の前に、係助詞「ぞ・なむ・や・か」のいずれかがある場合、「ぬ」は文末でも打消「ず」の連体形になる。だから、係助詞の有無はチェックしなければならないよね。

リョウキ:「裂けぬ。」の前を見ると係助詞はないので、「ぬ」は完了「ぬ」の終止形と判断できます。じゃあ、僕たちがさっき言ってたことはやっぱり正しかったんですね!

みみずく:まあ、結果的にはそうだ。でも、キチッと根拠を以て訳していくことが大切だよ!という意味で細かい話をしたんだ。以下に「ぬ」の識別をまとめるから、しっかり頭に叩き込んでおこう。

「ぬ」の識別

★接続から判断する
①連用形+ぬ→完了「ぬ」の終止形「~してしまった」
②未然形+ぬ→打消「ず」の連体形「~ない」

★接続で見分けられないときは、「ぬ」の後ろを見る
①「~ぬ。」→完了「ぬ」の終止形「~してしまった」
※ただし、「~ぬ。」の前に、係助詞「ぞ・なむ・や・か」があれば、打消「ず」の連体形になる。
②「~ぬ+名詞」→打消「ず」の連体形「~ない」


敬語を復習しよう!



 、拝み入りてうち見上げたれば、/(地蔵菩薩が)かくて立ち給へれば、/(尼は)涙を流して、拝み入り参らせて、やがて極楽へ参りにけり。/
 されば、心にだにも深く念じつれば、仏も見え給ふなりけりと信ずべし。

【訳】 尼は、拝みながら仰ぎ見ると、このように地蔵菩薩が立ちなさっているので、(尼は)涙を流して、拝み申し上げて、そのまま極楽往生した。
 だから、心にさえ強く念じれば、仏もお見えになったのだと信じるべきである。



キョウキ:とんでもない展開ね!

リョウキ:急に現れたババアが、傷ついた子どもを一生懸命拝んだと思ったら、そのまま極楽往生するとは!極楽へ行ったということは、つまり死んだということだろ?子どもの顔が裂けて「大変だー」ってときに目の前でババアが突然死したら、子どもも親もビックリだよね(笑)

みみずく:こういう展開があるから、古典は面白いんだよ。それはそうと、敬語と主語の把握の復習をしておこう。

1文目の述語を全部抜き出すと、「拝み入りて」「うち見上げたれば」「立ち給へれば」「流して」「拝み入り参らせて」「参りにけり」だ。これらの敬語の変化を見ていくよ。

まず「拝み入りて」「うち見上げたれば」には敬語無し、「立ち給へれば」には尊敬語の「給ふ」、「流して」は敬語無し、」「拝み入り参らせて」には謙譲語の「参らす」、「参りにけり」には謙譲語の「参る」――ここから何が分かる?

リョウキ尊敬語の入っている「立ち給へれば」だけ、主語が偉い人、つまり地蔵菩薩ということです。それ以外の述語に対する主語は尼さんです。

みみずく:敬語と主語の関係にもだいぶ慣れてきたようだね。その調子で敬語マスターを目指してくれ!

で、最後の一文は、本文全体のまとめ。仏教を信じているとこんなにいいことがあるよ、という仏教説話ならではのまとめ方だ。けど、この話を読んで僕が思うのは、「尼さんは本当に幸せだったのかな?」ってことだね。

キョウキ:仏様の存在を信じるあまり、子どもの顔の傷に地蔵菩薩を見てしまうなんて、もはや狂気の沙汰ですよね……

リョウキカルト宗教でも、よくこういうことがあるじゃない?信じれば、教祖様は神や仏になるし空も飛ぶ。信者自身だって、心の安定を得られるんだ。もっとも、それなりの金銭的代償は伴うけど(笑)

みみずく:「信じる者は救われる」もとい「信じる者は足をすくわれる」かな?

僕たちの価値観からすると「えーっ!?」って感じだけど、まあ、価値観は人それぞれということで無難にまとめて終わりにしよう。

では、長々と続いた「尼、地蔵見奉ること」の授業はこれで終了です。お疲れ様でした!

リョウキキョウキ:ありがとうございました!(了)

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[ 2015年03月28日 13:00 ] カテゴリ:宇治拾遺物語 | TB(0) | CM(0)
プロフィール

みみずく先生@妖怪博士見習い

著者:みみずく先生@妖怪博士見習い

都内(墨田区両国周辺)で家庭教師業を営んでいるみみずくと申します。本ブログでは、妖怪や幽霊、神仏等、怪しいモノが登場する古典作品を紹介します。高校生や大学受験生の役に立つように古典文法や古文常識に触れつつ、もののけ達の跋扈する、ちょっぴり怖くて魅力的な世界を散策します。一人でも多くの方に古典を楽しんでもらいたいと思っています。家庭教師・ライターのお仕事依頼等は、下のメールフォームからお願いします。

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