恐ろし!怪し!もののけ古典講座

妖怪や幽霊、神仏等、怪しいモノが登場する古典作品を紹介します。
高校生のテスト対策や大学受験対策でも役立つように、
古典文法や古文常識を解説します。が、メインはオカルト関連の薀蓄です。
「古典は面白い!」と言う若者が増えると、もののけ達も喜びます。
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尼、地蔵見奉ること(『宇治拾遺物語』より)(1)~説話文学について・主語の把握のテクニック~

今回から、古文の読解に入ります。まずは、以下の文章を読んでみましょう。

 今は昔、丹後国(たんごのくに)に老尼ありけり。地蔵菩薩(じぞうぼさつ)は暁ごとにありき給ふといふことをほのかに聞きて、暁ごとに地蔵見奉らんとて、ひと世界惑ひありくに、博打(ばくち)の打ちほうけてゐたるが見て、「尼君は寒きに何わざし給ふぞ」と言へば、「地蔵菩薩の暁にありき給ふなるに、会ひ参らせんとて、かく歩くなり」と言へば、「地蔵のありかせ給ふ道は我こそ知りたれ。いざ給へ。会はせ参らせん」と言へば、「あはれ、うれしき事かな。地蔵のありかせ給はん所へ、我をゐておはせよ」と言へば「我に物をえさせ給へ。やがてゐて奉らん」と言ひければ、「この着たる衣、奉らん」と言へば、「さは、いざ給へ」とて隣なる所へゐて行く。
 尼、喜びていそぎ行くに、そこの子に地蔵といふ童ありけるを、それが親を知りたりけるによりて、「地蔵は」と問ひければ、親、「遊びに往ぬ。今来なん」と言へば、「くは、ここなり。地蔵のおはします所は」と言へば、尼、うれしくてつむぎの衣を脱ぎて取らすれば、博打はいそぎて取りて往ぬ。
 尼は、地蔵見参らせんとてゐたれば、親どもは心得ず、などこの童を見んと思ふらんと思ふほどに、十ばかりなる童の来たるを、「くは、地蔵よ」と言へば、尼、見るままに是非も知らず、臥しまろびて、拝み入りて土にうつぶしたり。童、すはゑを持て遊びけるままに来たりけるが、そのすはゑして手すさみのやうに額をかけば、額より顔の上まで裂けぬ。裂けたる中よりえも言はずめでたき地蔵の御顔、見え給ふ。尼、拝み入りてうち見上げたれば、かくて立ち給へれば、涙を流して、拝み入り参らせて、やがて極楽へ参りにけり。
 されば、心にだにも深く念じつれば、仏も見え給ふなりけりと信ずべし。


皆さん、内容を理解できたでしょうか?

今回の文章は、『宇治拾遺物語』に収録されている「尼、地蔵見奉ること」というお話です。ここで少し文学史的なお話をしておきますね。

説話文学とは何か?



『宇治拾遺物語』は、鎌倉時代前期に成立したとされる説話集です。説話とは、古くより伝承されて来た話・物語一般のことで、妖怪や幽霊が登場するお話も沢山あります。『宇治拾遺物語』には、本朝(ほんちょう、日本のこと)・天竺(てんじく、インドのこと)、震旦(しんたん、中国のこと)の三国を舞台にした説話が収録されていて、内容的におよそ次の三種類に分かれます。

①仏教説話
②世俗説話
③民間伝承


今回紹介した「尼、地蔵見奉ること」は、①仏教説話に分類されるお話です。仏教説話とは、仏・菩薩の奇跡、高僧の逸話、世俗における因果応報の理などを記したものです。要は、「仏教のありがたさ」を説くためのお話で、当時の人々に仏教を布教する際に利用されたのでしょう。「尼、地蔵見奉ること」では、地蔵菩薩の霊験が描かれています。

古文が読みにくいのは何故?



さて、前置きはこのくらいにして、早速読解に入っていきましょう。

その前に皆さんにお聞きします。皆さんは、「古文は読みやすい・理解しやすい」と思いますか?

多くの方々は「いいえ」と答えることでしょう。そして、純粋な高校生諸君は、「古文を読めなくて理解できないのは、自分の頭が悪いからだ……」と嘆いているかもしれません。

しかし、ちょっと待ってください!
古文が読みにくくて理解しにくいのは、皆さんの頭が悪いからではありません!

古文が難解なのは、現代に生きる我々の感覚からすると古文が悪文だからです。特に、次の2点は古文を難解にしている最大の原因です。

①一文が長い
②主語や目的語が頻繁に省略される


この①②は、現代語の作文技法では「読みにくいからNG」とされます。しかし、古文では、こうした文体が普通なのです。僕達は悪文を読んでいるわけですから、「読みにくい」「理解しにくい」と感じるのは当然です。逆に、「古文はとても読みやすくて理解しやすい!」と言う人がいれば、その人はきっと平安時代からタイムスリップしてきたのでしょう(笑)

「古文は悪文だ」という意識で古文に接すれば、古文を理解できないときがあっても、「自分は頭が悪い……」と嘆く必要がなくなります。むしろ、「悪文を読もうと頑張っている自分はエライ!」と自分を褒めてあげましょう!そのくらい気楽に古典に付き合ってもらえれば、と思います。

とはいえ、古文を読めなければ詰まらないので、読解のためのテクニックについて解説します。

オニババアの法則~主語把握のテクニック~



今回皆さんに習得してもらいたいのは、主語の把握のテクニックです。「テクニック」というと難しそうですが、覚えるべきことは次の3つだけです。

①「名詞、~」→名詞が主語 
②「て」「で」の前後→主語は同じ
③「を」「に」「ば」の前後→主語は違う


「何のこと?」と思われるかもしれませんので、1つずつ解説しますね。

①「名詞、~」→名詞が主語

「女、言ふ。」という文があれば、「言ふ」に対する主語は「女」です。「女」という名詞と「言ふ」という動詞の間に「が」「は」等の助詞が省略されていますが、それらを補って「女が(は)言う。」と訳すわけです。名詞の次に「、」がある場合、その名詞が主語になる可能性が高いと考えてください(100%ではありません)

②「て」「で」の前後→主語は同じ

これは現代語でも同じです。「A君は勉強して、寝た。」という文では、「勉強した」のも「寝た」のも「A君」です。つまり、「て」「で」で結ばれた2つの述語(今回は両方とも動詞)の主語は基本的に同じだということです。

ある人、県の四年五年果てて、例の事どもみなし終へて、解由など取りて、住む館より出でて、船に乗るべき所へ渡る。


この文には「果てて」「し終へて」「取りて」「出でて」「渡る」という5つの述語があります。しかし、「て」でつながっているので、主語は全て「ある人」です。

③「を」「に」「ば」の前後→主語は違う

古文読解における主語把握で、一番のポイントがこの「を」「に」「ば」です。次の文を例に考えてみましょう。

この尼公、主のさきに打ちけるを、要事ありて、「その馬留めよ。」と云へば、鞭をつよく打ちけり。


この文では、まず「打ちける」の主語が「尼公」です。「打ちける」に「を」があるので、ここで主語が変わります。「ありて」「云へば」は「て」でつながっているので主語は同じです。この2つの動詞の主語は、「尼公」と一緒に行動している「主」です。「云へ」に「ば」があるので、ここでも主語が変わります。「打ちけり」の主語は再び「尼公」となります。

この文の主語を補うと、次のようになります(主語には下線を付しました)

この尼公、主のさきに打ちけるを、/(主が)要事ありて、「その馬留めよ。」と云へば、/(尼公が)鞭をつよく打ちけり。


「を」「に」「ば」の前後では主語が変わりやすいということです。そのため、僕は生徒に次のように言っています。

「オニババア(「を」「に」「ば」)に出会ったら、主語が変わる!」

もちろん、オニババアも毎回主語を食らうわけではありません(笑)「を」「に」「ば」の前後で主語が変わらないこともあるので、常に文脈を見ることが大切です。

上記①②③に加えて、敬語も主語把握のヒントになります。ただ、今回は、敬語のお話を省きますね。

古文読解ですべきこと



以上を踏まえて、古文読解ですべきことがあります。それが次の3点です。

①主語には印を付ける。
②主語の変わり目には「/」(スラッシュ)を入れる。
③省略されている主語を書き込む。


この3点を毎回キッチリ行うことで、古文読解のスキルは飛躍的に向上します。実際に「尼、地蔵見奉ること」の冒頭で練習してみますね。

 今は昔、丹後国に老尼ありけり。/地蔵菩薩は暁ごとにありき給ふといふことを/(老尼は)ほのかに聞きて、暁ごとに地蔵見奉らんとて、ひと世界惑ひありくに、/博打の打ちほうけてゐたるが見て、「……」と言へば、/……


「て」「で」や「お」「に」「ば」に注目して主語を把握してみました。これでだいぶ読みやすくなったはずです。ちなみに、この文章に登場する「博打」は「賭け事・ギャンブル」そのものではなく、「ばくち打ち=賭け事をする人」と解釈してください。

今回は、主に主語把握のテクニックについて解説しました。あまり面白くなかったかもしれませんが、古文読解では必須のテクニックです。古文を苦手とする高校生や受験生は、是非とも習得して使いこなしてくださいね。

次回から、本格的に読解を行っていきます。(続く)

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[ 2014年05月12日 13:30 ] カテゴリ:宇治拾遺物語 | TB(0) | CM(0)
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プロフィール

みみずく先生@妖怪博士見習い

著者:みみずく先生@妖怪博士見習い

都内(墨田区両国周辺)で家庭教師業を営んでいるみみずくと申します。本ブログでは、妖怪や幽霊、神仏等、怪しいモノが登場する古典作品を紹介します。高校生や大学受験生の役に立つように古典文法や古文常識に触れつつ、もののけ達の跋扈する、ちょっぴり怖くて魅力的な世界を散策します。一人でも多くの方に古典を楽しんでもらいたいと思っています。家庭教師・ライターのお仕事依頼等は、下のメールフォームからお願いします。

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